こんな話  2019年2月20日|水曜日

尾北高校・古知野高校・丹羽高校・江南高校の校歌に和歌のおもかげを見る。

「歌は世につれ 世は歌につれ」と申します。

和歌といえば、「万葉集」「古今和歌集」などが有名ですね。

 

「万葉集」は奈良時代(8世紀)に成立した最古の和歌集です。

主に「五七調」で、感情そのままを表現した素朴で雄大な歌が多く、男性的な「ますらをぶり」と呼ばれています。

 

「古今和歌集」は平安時代(10世紀)に成立した和歌集です。

五・七・五・七・七の短歌が多く、主に「七五調」で、繊細で優美な歌が多く、女性的な「たをやめぶり」と呼ばれています。

 

さて、和歌の伝統は現代でも生きているのでしょうか。

そこで、近隣の高校の校歌を調べてみました。

尾北高校、古知野高校、丹羽高校、江南高校の各高校です。

校歌の出だしを比較してみましょう。

 

「尾北高校校歌」創立1948年 (前身校1925年創立)

♪ 東海に 日がかがやけば 大いなり 伝統の 樹のかげ ここに学ぶ……

 

五・七・五・五・四・六

五七調からはじまり、四音と六音を入れて工夫されています。

他に「うるわし」「まほろば」など万葉風のみずみずしい言葉が入っています。

 

「古知野高校校歌」創立1949年

♪ あめつちの 恩恵(めぐみ)ゆたかに 伊吹嶺(いぶきね)の かがようところ……

 

まさに「五七調」ですね。

「あめつちの」は万葉集、山部赤人の「長歌」にもおなじみです。雄大さと悠久さを感じる歌詞ですね。

 

上記の2校は、いずれも戦後まもなくの創立。

五七調の雄大な万葉風ですね。

その頃は、まだこの尾張地方もビルが少なく、濃尾平野の田畑が広がって、東に小牧山、北には岐阜の山々、西には養老山系を望み、ずっとむこうに伊吹山が見えるような、万葉時代さながらの素朴さが残っていたんでしょうね。

 

「丹羽高校校歌」創立1974年

♪ みどり輝き 風光る 尾張平野が 果て遠く……

 

七・五・七・五

こちらは「七五調」ですね。どこか平安時代のみやびな感じが出ていますね。

歌詞は他にも「若い翼」「集う日日」「語りかける」などフォークソングや青春ドラマにも親しみのある言葉があります。

創立が1974年なので、まさに70年代フォーク全盛、さらに青春学園ドラマが大ヒットの頃ですね。

優美な自然の中にも、友とともに過ごす高校生活の青春が思い起こされます。

 

「江南高校校歌」創立1980年

♪ 木曽洋々の 流れなす 未来めざせば 頬熱し……

 

七・五・七・五

こちらも「七五調」で、校歌の歌詞全文が七五七五で詠まれている定型詩です。

おわりの「江南高校」のみ八音です。

他にも「真理」「歓喜」「理想」などの漢語が入って往年の明治・大正時代の書生気質が味わえます。

1980年創立ですが、日本がバブル期に入っていく頃に、硬派な歌詞がむしろ新鮮に感じられますね。

 

どちらの高校の校歌にも、「尾張平野」「木曽川」「伊吹」などの尾張北部特有の豊かな自然が歌われていて、気持ちよくなります。

ぜひお近くの小学校や中学校の校歌も探してみてください。思わぬ新しい発見があるかもしれません。

 

(このコラムは地域情報誌『くれよん』2019年3月号の巻末にも掲載されています。)

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