本の紹介 2019年4月10日|水曜日
『縄文探検隊の記録』
また、縄文か。
と思われるかもしれませんが、本当好きなんです。縄文時代。
縄文時代を読み解くうえでは、一番入りやすいのが本書です。
教養堂のほんの紹介、今回はこちら。
『縄文探検隊の記録』 夢枕獏 岡村道雄 共著 集英インターナショナル新書
縄文時代をとにかくざっくり知りたい時に本書はもっとも有効です。
縄文時代のトイレ事情
第2章 「住まいとコミュニティ」では、研究者の飽くなき追求に感服させられます。
(※警告:以下の内容は、食事中の方は自己の判断に従ってお読みください。)
夢枕:ちなみに縄文時代、トイレはどうしていたのでしょうか。僕は用足しは野天で行われ、暗黙のルールとしてあの辺で済ませよ、という感じだったと想像しているのですが。
岡村:縄文時代のトイレの証拠は一切ありません。尾籠な話ですが、貝塚からはときどき化石化したウンコ(糞石)が出てきます。… (中略)…教科書に載った鳥浜貝塚では、糞石がまとまって出土した場所はトイレだったといわれたこともあります。私はほんとうに人間のものか疑いました。そこで当時幼かった娘たちと私のウンコと犬などの糞を五年間調べたのです。ウンコが出たらお父さんに教えて見せなさいと。
夢枕:それはすごい研究です。(笑)。何かわかりましたか。
岡村:犬のウンコは表面が滑らかな砲弾型で、場合によってはらせん状にねじれます。それに対して、人間やサルのウンコは表面がボソボソし円筒状に圧縮されたような感じです。その形の比較や内容物の分析などから、貝塚のウンコ化石は、すべて犬のものであることがわかりました。
いやはや、縄文時代を探るには、かくも泥臭い実証が必要なんですね。
結局、縄文人のトイレ事情は謎のままで、日本最古のトイレは、1300年前の飛鳥藤原京や大宰府鴻臚館の跡まで待たなければいけないんだそうです。
万葉翡翠
第3章 「翡翠の道をたどる」
翡翠については、北は北海道から南は沖縄まで、現在日本の版図そのままに分布して出土しています。
翡翠はおもに新潟県糸魚川と支流の姫川付近にしか採れないので、交易がされていたとされています。
本書では、翡翠は、各村々の物々交換によって順繰りに移動したのではなく、もともと「渡り」のような旅人を本職とする特別な少数のグループのみが、各地に出向いて交易していたという仮定が書かれています。
翡翠を持った特別な人が、年に1度か2度、各地の集落を訪れるという、富山の薬売りのような人がいたというのは、なんだか興味深いことです。
とにかく縄文時代は日本の原風景みたいなところがあって、空想する面白さがあります。
縄文時代はいつ終わったのか、という質問に、前述の考古学者の岡村氏は、「昭和30年代ごろ」と答えるのだと言います。
縄文時代の生活風俗は、昭和30年代までモザイク状に色濃く残っているという見方もできるそうです。
これまでの縄文アーカイブ
これからも縄文シリーズは続きます。
(2019年4月9日(火) 朝日新聞のオピニオン面から)
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