本の紹介 2025年3月10日|月曜日
『砂糖の世界史』決して甘くはない歴史
3月10日は”砂糖の日”。
塾長のほんの本の紹介、今回はこちら。
『砂糖の世界史』
著者 川北稔
発行 岩波ジュニア新書
初版 1996年7月22日
おすすめ 中学2年生以上
岩波ジュニア新書はおもに10代の中学生から読める入門書という位置付けです。
しかしながら一般の大人でも十分読み応えがあります。
概略を掴む最初の本としても有効です。
岩波ジュニア新書でも、ロングセラーで読まれている名著。
モノを通して見る歴史の本の中では草分けです。
本書は「世界システム論」という歴史の見方をベースにしています。
砂糖という一つの商品から、世界史的、人類史的に物事を見通せる思考の幅が広げられます。
大航海時代を経て、砂糖は南米やカリブ海で栽培されましたが、これが植民地、プランテーション農業の始まりで、のちにアフリカから黒人奴隷を送り込む三角貿易に発展しました。
イギリスが世界の覇権を握った後は、この砂糖が産業革命時代の労働者の過酷な労働を栄養面で支えました。
近代以降、世界で広く取引された商品を「世界商品」と筆者は呼びます。
コーヒーや茶、タバコ、カカオも同じく世界商品といえます。
綿織物などもそうで、これらは近代においてプランテーション農園と奴隷制度、植民地化とワンセットでした。
世界商品はアフリカの奥地でもヒマラヤでも消費される商品のことです。
現代で世界商品といえば、石油やテレビ、自動車と筆者は付け加えます。
本書が書かれたのは、1996年です。
2025年現在なら、これはスマートフォンやネットにあたると言えましょう。
そうなると今、手元にあるスマホなるものは、大航海時代以来、営々と収奪が行われた植民地競争のなれの果て、とも言えそうです。
それまで植民地となった地域に拓かれたプランテーション農園が、今は個人のスマホの中のネット空間に移っていると言えなくもありません。
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