本の紹介 2022年10月13日|木曜日
『最長片道切符の旅』宮脇俊三の鉄道紀行文
教養堂のほんの紹介、今回はこちら。
『最長片道切符の旅』
著者 宮脇俊三
発行 新潮社
初版 1983年4月1日
遠回りの話
自由は、あり過ぎると扱いに困る。
籠の鳥は外に出されるとすぐ空へ飛び立つのだろうか。
……
本書の冒頭の書き出しです。
鉄道紀行文の第一人者、宮脇俊三の名著。
北は北海道の広尾から南は鹿児島の枕崎まで。
一筆書きで、しかも最長ルートで国鉄で旅をしたらどうなるか。
乗車券の発行も一苦労。
出発は、1978年(昭和53年)10月13日。
北から、紅葉前線とともに南下。
鉄道を乗り継ぐこと、13319.4㎞。
広尾駅に立った筆者は、すでに紅葉の盛りが過ぎていることを知ります。
北海道から本州へはもちろん青函トンネルがない時代なので、青函連絡船を使います。
12月20日18時30分に枕崎に着きます。
切符には無数の途中下車の印の跡。
終着の枕崎駅の夕暮れの情景は印象的です。
今、本書を読むと鉄道の全盛時代に思いを馳せることができます。
特に北海道はこの時代から40年、今では半分くらい廃線になっています。
今では珍しい夜行寝台列車や急行列車など、廃止された貴重な列車の記録にもなっています。
地図帳と一緒に読み進めると、まだ見ぬ地方や町並みが豊かに想像できます。
鉄道を「通った」ことのある子や「鉄分」がある子はもちろん、活字を読むのがちょっとという子でも、十分読める内容です。
著書のおすすめの本には他にもあります。
『時刻表2万キロ』
初版 1978年
こちらは国鉄全線乗車の記録。
『時刻表昭和史』
初版 1980年
著者の少年時代からの鉄道の記憶がつづられています。
特に印象に残ったのが、昭和20年8月15日の鉄道の車内の様子。
山形県の今泉駅で正午前に列車が止まると、乗客が全員ホームに出るように促されます。
そこで玉音放送が駅のラジオから流れるのを聴く場面があります。
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