本の紹介 2018年4月24日|火曜日
『大脱走』
教養堂のほんの紹介、今回はこちら。
『大脱走』米映画1963年
監督 ジョン・スタージェス
10代の男子は必見の映画。
中2の時にこの映画をテレビのロードショーで見てしまったために、いくぶん自分の人生が変わったと思っています。
見終わったら、もう自分がスティーブ・マックィーン扮する不屈の主人公ヒルツになっていました。
この映画の影響でバイクに興味を持ち、ついにはバイクを買って日本全国をツーリングに行くとはその頃は思いもよらず。
第2次世界大戦の実話をもとに作られたハリウッドの名作映画です。
ドイツ軍によって捕虜となってしまったイギリス空軍将校たち。
「地上勤務」を余儀なくされるわけですが、ドイツ軍はその中でも脱走の常連たちをドイツのとある森林奥深い厳戒態勢の捕虜収容所に集めます。
捕虜となっても誇りを失わないイギリス空軍将校たちは、大脱走計画をひそかに練ります。
250名が一度に脱走を図れば、ドイツ本国内での大捜索が余儀なくされ、後方支援のかく乱に手を貸せるわけです。
ほぼ汗くさい男しか出てこない映画ですが、ほんとうに色々なパターンの男が登場する、まさに男の教科書です。
さらに組織論としても見ることができます。
脱走用のトンネル掘りや脱走後の必要な物資の調達、トンネルの土の処分など、非常にリアル。
みんなそれぞれに役割分担があるわけです。
脱走用のトンネルを掘るにも3本同時に掘り進めます。敵に発覚した時の保険を掛けるのです。
主要人物は、それぞれ徒歩、バス、トラック、列車、自転車、バイク、飛行機、小舟とさまざまな乗り物で脱走します。
その中でスティーブ・マックィーンのトライアンフのバイクの逃走シーンは本当に爽快です。疾走という言葉がぴったりです。ドイツの田園地帯を走り抜けるバイク。宙を舞うバイク。坂を猛スピードで駆け抜けるバイク。
永世中立国スイスまで逃げ切ることができるのか。ヒルツはバイクのタンクの給油キャップを開けて残りのガソリンがあるか確認します。この時、油量を正確に見るためにバイクを少し横に揺らします。この細かい仕草!本当にバイクが好きだったマックィーンだからこそできるリアルな演技。
最後にバイクごと鉄条網に突っ込み、ドイツ軍に包囲されます。ヒルツは彼とともに逃走したこのバイクのタンクを、お疲れさんとでもいうようにポンポンと手で叩きます。
いつかこんな風にバイクで走れたらと憧れました。
今でもバイクに乗る時は、この時のBGMが聞こえてきます。
さて、主な登場人物をご紹介します。
ラムゼイ大佐:捕虜の代表として収容所所長と交渉をする。いかにも英国貴族らしく収容所でも庭いじりをしている姿がサマになる。責任者たる者の理想的な人物。そして泰然自若。
ビッグX:ロジャー・バートレット少佐。この脱走計画の指揮者。大胆不敵。組織作りと脱走のトンネル堀りが生きがい。「ジェラッシク・パーク」の老人役だったリチャード・アッテンボローが演じる。この頃はまさにあぶらの乗り切った脱走計画の大物として登場。ビッグXのカリスマ的な指導力。ドイツ語とフランス語を駆使して逃走するシーンは圧巻。沈着冷静、頭脳派。
トンネル王:ダニー。ポーランド人。トンネルを掘り続けて17番目。なぜか閉所恐怖症。演じるのは、もちろん「うーん、マンダム」でおなじみ、チャールズ・ブロンソン。日本語吹き替えは「紅の豚」でおなじみ大塚周夫。ブロンソンの渋い演技。武骨、質実剛健。
製造屋:セジウィック。オーストラリア人将校。ニヒルな感じがたまらない。演じるのは、もちろん「スピーク・ラーク」でおなじみ、ジェームズ・コバーン。日本語吹き替えはもちろん「次元大介」の小林清志。というより「次元」のイメージはもともと「荒野の七人」のジェームズ・コバーンから。ゆったりとした物腰の演技。彼だけ他とは違う時間が流れる。皮肉と諧謔精神。
調達屋:ヘンドリー。アメリカ人。演じるのはジェームズ・ガーナ―。一癖も二癖もあるが目が不自由な同僚を助ける。吹き替えは「家弓家正」カリオストロ伯爵の声です。要領よく立ち回るが、情にも厚い。
独房王:ヒルツ。アメリカ人。この映画の主役と言えばこの人。スティーブ・マックィーン。
「戦争やっているうちにベルリンを見ておきたいね。」と不敵に笑う。
収容所所長は「アメリカ人将校はみんなお前のような無礼者か?」と聞くと「ま、99%はね」と答える。
つまりこの映画には、あらゆるパターンの男のお手本が詰まっているわけです。
誰に惹かれるか、でタイプが分かれます。
中学生の頃はもちろんヒルツでしたが、20代の頃はヘンドリーとセジウィック、さらに30代になるとブロンソンのダニー。
そして40代になるとやっぱりビッグX。いいなあ。
もっと年を重ねると泰然自若のラムゼイ大佐に惹かれていくかもしれませんね。
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